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蔵見学(宮城県の蔵元)

蔵見学2017「川敬商店」

蔵王酒造さんに伺った翌日は、
美里町の「川敬商店」さんへお邪魔しました。


このブログでは、なんと2008年に記事を投稿して以来!
ちょっと自分でもびっくりしました。
その間にも、別なお仕事などでお邪魔しているし
川敬商店の顔として活躍中の川名由倫さんとは
イベントなどでちょくちょくお目にかかっているので
自分にとってはとても身近で親しみを感じている蔵元さんなのです。

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(上は昨年の11月の穣りの宴での由倫さん)

「黄金澤」、「橘屋」を造る川敬商店さんは、全国新酒鑑評会の金賞を
13年連続受賞! しかも記録は更新中!

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前日にお邪魔した蔵王酒造さんもそうなんですが、
この川敬さんも以前は3000石を造っていたこともある蔵元さんでした。
なので、敷地が広くて蔵も大きいのですが
現在は小仕込み中心に約400石の規模で造っていらっしゃいます。

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酒造りの工程で重要な順番のことを言った言葉で
「一麹、二酛、三造り」というのがありますが、
宮城の蔵元さんたちは、麹のさらに前の「洗米、浸漬」の段階をすごく大切にしています。
川敬さんもまた然り。

精米歩合が60%以下の米は、このネットに5㎏ずつ入れて手洗いされてるそうです。

洗米専用の機械もちゃんとあるのですが

「5㎏ずつだとよく水をかけながせて、ぬかをきっちり落とせるし
雄町のような割れやすい米も、やさしく洗えるんです」と由倫さん。

黄金澤や橘屋の、曇りのないおいしさの理由は
こんなところにあるのかな、と思った話でした。

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もう今期の麹仕事は終了されていました。

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「今年は米が固めだったので、最初の段階であまり乾かし過ぎないようにしました」
と由倫さん。

下の穴の空いた板がスライドできるようになっていて
乾かしたいときは穴を広げ、温度を上げたいときは穴を閉じる
という風に使うそうです。

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ひとめぼれ 60%精米の麹。

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今期最後の酒母を見る由倫さん。
「この子、すごい元気なんです。いい子なんですよ~!」と
愛おしそうに語るその姿から、母性を感じました^^

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もろみタンクもあと数本。
雄町で仕込んだ1本の酒母を2つのタンクに分けて仕込んだ兄弟タンクがあり、
それぞれ味が違うことを確認。面白い!
どんなお酒として販売されるのかなあ、楽しみです。

最後は大吟醸や橘屋純米吟醸原酒、黄金澤黒ラベル、橘屋雄町などを
きき酒させていただきました。
大吟醸がとにかく素晴らしいお酒で。。。うっとり。。。

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「人の手をかけて、人の手で慈しんで酒造りをしたい」と話していた由倫さん。

これを聞いて、思い出したのが、以前、お父さんである社長の正直さんが搾りのタイミングについて話された言葉。

「もろみの声を聞き、もろみとお話するんです」。

このお話、お酒への愛情を感じて、感動したんですよね~。

由倫さんの言葉に、父から娘にしっかり受け継がれている
川敬さんの酒造りの原点を見た気がしました。

連れて行ってくださった阿部酒店の阿部さん、
ご一緒させていただいた皆さま、
そして蔵の皆さま、どうもありがとうございました。

蔵見学2017「蔵王酒造」

3月初め、宮城の2つの蔵を続けて見学させていただきました。
 
まずお邪魔したのが白石市の「蔵王酒造」さん。
2014年、2016年に続いて、近年では3度目です。
2014年 その1 その2
2016年 その1 その2
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大滝真也さんが杜氏となられてからは2回目の見学です。
今回の見学は蔵元見学がほぼ初めての方々にご一緒させていただいたこともあり
大滝杜氏が酒造りの仕組みについてとても分かりやすく説明してくださいました。
例えば酒母を造る段階では、
健全な酵母を大量に増やすという目的がありますが、
このことを説明するのに、大滝さんはこんな風に話しました。
 
「この部屋(酒母室)に、最初私たち7人位しか酵母がいないとして
このままだとすき間がたくさんあってすかすかです。
分裂して数が増えて自分たち(つまり酵母)で部屋がいっぱいになれば
他のもの(つまり雑菌)が入りにくくなりますよね」
分かりやすい!
説明を聞いていた方々、「なるほど~!」と感心してうなずいてました。
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むくむくと元気な酒母。
「酒母の段階がいちばん香りが高いんですよね。
醸造家としてはこの香りを残したいんですけど、なかなか難しいですね」

(大滝さん)
 
さてここ4、5年の間に、一気に宮城の人気銘柄のひとつになった感がある蔵王さん。
その間、上槽後の酒の温度管理の徹底をはかったり、
麹室や、ヤブタの濾板を新しくしたり、分析の機械を導入したり、
酒質を上げるために、ひとつひとつ改良を重ねてきました。
(その辺は、2014年、2016年の記事をご覧くださいませ)

「今期、ひとつ心がけてやっていたことがあります」と大滝さん。
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それは「もろみの中のお米を食べること」だそうです。

米を噛んでみて、その硬さを感じることで溶け具合をはかることを
意識してやっていた、と大滝さん。
「データは大事だと思いますが、それだけに走らないようにして
五感を使って、データとすり合わせる。それが今の自分たちの造りに
いちばん合っているのかなと思います」。
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麹室では、副杜氏で、麹担当の金子さんが作業を見せてくださいました。
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種麹も見せていただきましたよ。

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仕込みを行う下の階に出来た麹を下ろすために、床に空けられた穴。

古くからの蔵元さんには、よく見られる合理的な工夫ですが、
蔵王さんにもあったんですね!

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火入れ・瓶詰めのラインも見せていただきました。
火入れはプレートヒーターと、パストライザーの使い分けをされていて
それらの特長についても説明がありました。
現在はろ過後、1週間以内には火入れするようにしているそうです。

冷蔵庫は現在5つ。
保存するのに使うのはもちろんですが、
それぞれ設定温度が違う冷蔵庫間を出し入れすることで、
出荷前の酒の味の進ませ具合も調整しているとのお話でした。
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最後はきき酒をさせていただきました。
いつも見学に伺った時にお邪魔するこのお部屋、
リフォームして、とても素敵になってました!
夏場は大工の棟梁だという蔵人さんが手掛けられたと聞き、びっくり。
麹室や麹の大箱も作った方です。すごいわー。。。

同行の方々から、大滝さんが杜氏になられたいきさつについての質問が飛び
その話の流れから、前杜氏の杉浦さんのお話になりました。


「今自分が杜氏になってあらためて思うのは、
『人に任せる』のがどれだけたいへんなことかですね」

と大滝さん。

「杉浦杜氏は、自分に任せる時は全部黙って口出しせずに任せてくれました。
きっと心配だったと思うんですけど…。それを表に出さないようにされてて
自分たちがのびのびと酒造りに携われるようにしてくださった」。

言葉の端々に、杉浦杜氏へのリスペクトと感謝が感じられて
こちらまで何となく、うるっと来るものがありました。
蔵王酒造さんを訪ねていつも思うのは、
ホントに蔵の方々が楽しそうに、仕事に向かっておられるなということ。
もちろん大変なことはあるんでしょうけれど、
クリアにできる物や事はみんなで解決していこうという空気があります。

「酒は作業をこなせばできてしまう。だからこそ、
自分たちはそこにひとつひとつ意志を込めて造りと向き合っていきたい」


と最後に話してくれた大滝さん。

これはたぶん蔵王酒造で働く方々全員の意識だと思います。
それが伝わってくる蔵見学でした。


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蔵の皆さま、ご一緒させていただいた皆さま、
どうもありがとうございました!

蔵見学2016「山和酒造店」

2月半ば過ぎの蔵見学は、加美郡加美町の「山和酒造店」さん。
早坂久美さんにお声掛けいただいて、伺うことができました。
前回はいつだったかな~と自分のブログを振り返ってみると、
2009年2月。なんと、7年前!
ひゃ~、めちゃめちゃ久しぶりです。。。

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迎えてくださったのは
山和酒造店7代目蔵元の伊藤大祐さん。
最初にお話をいろいろ伺ったのですが、
面白かったのが、お酒の甘さの話。
近年の日本酒のトレンドとして、やや全体的に甘めな酒が
好まれている傾向です。
といっても、宮城県は比較的ドライなお酒が多いと思うのですが
その中にあっても特に山和さんのお酒は、大吟以外はけっこうドライ。
かなりすっきりタイプで強く主張する香りもありません。
伊藤さん自身の酒の好みも、
昔から変わらずで、はっきりしていて
自蔵の酒とかけ離れたタイプをおいしいと思うことはほとんどないそう。

「熟成だめ、生ヒネダメ、カプロン酸系の香りも好きじゃない。
日本酒に対しての許容範囲はめちゃめちゃ狭い」
そうです(笑)。
「酒って、絶対食べながら飲むじゃないですか。
そのほうが体にもいいですし。
おいしいものを食べて、いっしょにお酒を楽しむのが
いちばん健全な形だと思うんですよね」。

 

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その一方で、好みとは別に
完成度が高い酒が好き。『こういうものが造りたい』と意図して
造ってることが分かる、そういうお酒を造っている方たちはすごいなと思います」。

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今期からの洗米器(部分)。
最新型だそうですけど、ほぼ原形とどめてないそうです。
内側の配管を増やしたり、水流の強さを変えるためにノズルを変えたり
中が見られるようにしたり、水抜き用のバルブを付けたり。
とにかく、いろいろ切ったり、穴開けたり、溶接したりして改造したそうです。
なんか、このまま
新商品として売りだせそう(笑)
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麹の大箱。麹は大吟用もすべてこれで造るそう。
スタイロフォームという、断熱材製です。
写真がないのですが麹を引き込む「床」のところも
この断熱材で囲ってありました。
麹づくりの最初の段階で乾燥させ過ぎないようにするのに
とてもいいそうです。
この大箱も、センサーとか換気扇を買って
特注で作ってもらったと話されてました。
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仕込み蔵。

ここで私が印象的だったのが
伊藤さんがもろみを観察する様子。
うまく表現できないのですが、
「生き物をお世話する感」をとても感じました。
ちょっとした変化に、ひとりごとをぶつぶつ言ったり
元気がないのを心配して、その後蔵人さんをつかまえて確認したり。
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分析室 も新しくなったところです。
最近、分析機械、力を入れてる蔵が増えた気がします。

冷蔵庫は-2℃とか、-3~4℃とか、
全部で4つあるそう。
以前の見学の時に「造ったあとの貯蔵は何でも同じ冷蔵庫に
いれればいいっていうのはもうダメで、蔵ごと競争のレベルが
そういうところまで来ている」と伊藤さんが話されていたのを
思い出しました。
あのころは、へぇ…なんて思って聞いてたけれど
実際、今そうなってますよね。


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最後に、3種類をきき酒させていただきました。
左の特別純米が、ごく微かに苦味を感じるくらいにかたく感じて
これは新酒ですか?と聞いたら、26BY(前期)との答え。
びっくりして「熟成感のかけらもないですね!」と言うと
伊藤さん、ふっと笑って
「それがうちの酒の良さです」とひと言。
なるほどな~!
いちばん右の純米大吟醸は確かにはんなりとした甘さは感じます。が
特別純米と純米吟醸は、冷たくしてあると
少しそっけなく感じるほどのドライさ。
それが、常温に近づいてほどけてくると
ほんのわずか、やさしい感じが出てきてそれが心地よい~。

今回の蔵見学でいちばん印象的だったのは、
既存の機械や道具の機能に妥協せずに、
自分たちの納得いく作業ができるよう工夫や改良をするこだわり。
お酒自体は今の甘さへ向かうトレンドとは真逆に近いけれど
けっしてマニアックじゃない。
造りは目指す酒質に向かって流されず、
ブレずにやっていらっしゃると感じました。
うーん。上手く書けなくてもどかしいのですが。。。


なんか、ガンコさ、ブレの無さがいいじゃないですか!
そして、食中酒LOVEな私には、大歓迎です!

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またまた宮城の蔵元の底力を感じた見学でした。
お忙しいなか、たくさんお話してくださった伊藤さん、
テンドしていただいた、早坂久美さん、
どうもありがとうございました!

蔵見学2016「蔵王酒造」その2

 
蔵王酒造さん蔵見学、その2です。
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ここは2年前、蔵見学にお邪魔した時、麹室だった場所。
現在は一角を枯らし場として使われてます。
以前はここに大きな自動製麹器がありました。
(今もありますが麹づくりには使われていない)

前回の時に〝設備を新しくすることを検討している〟
というお話が大滝さんからあったのですが、

それがこちら! じゃじゃーん!

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中にいらしたのはちょうど麹の仕事をされていた副杜氏の金子純平さん。

この新しい麹室、酛屋さん(酒母担当の蔵人さん)に作ってもらったのだそうです。夏場は大工をしている方だと聞いて納得~。

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温度差でレンズが曇ってしまったので、若干霞んでますね^^;

この麹の箱(簡易送風機付き大箱)も手づくり。
麹室を新しくすると木香が心配されるのですが
箱自体は2年前に作ってあったものだそうでして
その間に木の香りがかなり飛んだようで
今のところ影響はないそうです。

そして、金子さんが青い手袋をされていますが
これは不必要な菌が入り込むのを少しでもなくすように、
2月初めから手袋をして麹仕事をやり始めたとのこと。
同じ県内の某蔵元さんから教えていただいたそうです。
ただ、素手と違って温度が実際より低く感じるため
温度計をしっかり確認しながら麹仕事をされているとのことでした。

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種麹をふる場所は、使う米の質によって
室に引き込んでからふる場合、放冷機でふる場合と変えているそう。

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もろみを搾る機械、ヤブタの濾板も今期新しくされたとのこと。
プラスチックとシリコン製のものにして
俗に言う「ヤブタ臭」が付く心配や気遣いがなくなったそう

そして良かった点がもう一つ。
おり切れが良くなって搾りのスピードが上がったとのことです。

搾ったばかりのお酒(美山錦 55%精米)をきかせていただきましたが
ピン!として、それでいてジュワッとしたうまみが奥にひそんだ、
なんともきれいなお酒でした~! 楽しみ~!

搾って火入れまではだいたい1週間、
どんなに遅くても2週間以内には行っているそう。
これも近年の蔵王がフレッシュになった理由のひとつですね。

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分析室。
こちらも新しい機械を導入したおかげで
酸度、アミノ酸度、日本酒度、アルコール度数など
分析にかかる時間がぐっと短縮して楽になったそうです。

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最後に限定商品(ココロシリーズ)をきき酒させていただきました。

左上から
爽やかな香りが特徴的な蔵王純米吟醸K。
穏やかな香りでほどよく旨みのある蔵王純米酒K。
左下が
すっきりきれいでバランスの良い特別純米酒K。
凛とした印象が際立つZAO Inspiration。

きき酒しながら大滝さんに伺った中で印象に残ったのが
年末から年始にかけて、1回仕込みをストップして
瓶詰め、出荷を蔵人含めて全員で行うというお話。
「酒を造ることは大切だけど、
瓶詰め、出荷という最終段階の大切さを

全員しっかり分かってることが必要だと思うんです」

 

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蔵王酒造さんにくると
若い方々が真剣に、でもいきいきとして
酒造りに向かい合っている姿にいつも心を打たれます。


大滝さんに、初めての杜氏としての感想を聞くと
「周りに助けられてます」と即答。
その言葉にまたまたおばちゃん心の中でウルウル。。。
周り、というのは、昨年までいらした杉浦杜氏、蔵人さんたち、
そして会社の方々を差しているのはもちろんですが、
おそらく、いろいろと情報交換されている
県内の他の蔵元さんのことも意識されての言葉と
受け止めました。
また、昨年11月、「穣りの宴」の時には
「無事に造りを終えることが、まずは目標」とおっしゃってました。

といいつつ今期は今期なりにチャレンジされていることもあるのでしょうが
体を壊さず、何事もなく、最後まで良い酒が造れますように~、と
またもやおばちゃん心で祈らずにはいられません。

そして、お会いしたことはないのですが
若い彼らに全面的に酒造りを任せている
蔵王酒造の社長さんもすばらしいと思います。
いつかお会いしてみたいです。

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造りでお忙しいなか、丁寧にご説明いただいてありがとうございました!

これから出てくる蔵王酒造さんのお酒も楽しみにしています!

蔵見学2016「蔵王酒造」その1

おひさしぶりでーす!
年1ペースになってしまった日本酒ブログです。
もう読んでいる人がいるんだかどうかもあやしいですが
とにかく更新したい時にする!(開きなおり)ことにしましたので
読みたい方は読んでくださいな…(トホホ)。

さて、2016年最初の蔵見学。

2月13日、宮城県白石市「蔵王酒造」さんへ伺いました。
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山も酒も蔵王!

大事なことなのでもう一度言いますよ。

山も酒も蔵王!

素晴らしいキャッチコピーですね!

蔵王酒造さんを訪ねるのは2014年以来2年ぶり。

今回もこのお方に案内していただきました。

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大滝真也さんです。

前回の時には蔵人として案内してくださったのですが
今期から「杜氏」として造りに臨んでいらっしゃいます。
あらあらまあ、ほんとに立派になって~ウルウル
…と、親戚のおばちゃんのような気持ちです。

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まずは原料処理についてのお話。
浸漬(米に水を吸わせる)のムラを無くすために
かなり気を遣って、いろいろと工夫されてる様子。

〝一麹二酛三造り〟とは
酒造りで大事なことの順番とよく言われる言葉。
でも大滝さんは「麹も酛も大事ですが、実は最初の浸漬が8割」
と、原料処理の大切さを話していらっしゃいました。
 
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仕込み蔵です。
広くて、タンクがたくさんありますが、
現在はこの半分くらいを使って仕込みをされてるとのことです。
 

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2トン仕込める大きなタンクなのですが
今はそれを使って1.5トン仕込む規模がメーンとのこと。
もろみの液面が通常より下がって冷えやすく
「それはうちの目指す酒質にとって都合がいいんです」
と大滝さん。
温度が急激に上がらないよう、ゆっくりじっくり酵母の発酵を促す。
それには健康な酵母が適正な量とスピードで増えることが大事。
そのために特に添え仕込みは慎重にやっているそうです。

〈ここで日本酒の発酵の仕組みについて少々〉

日本酒のもろみタンクの中では
微生物たちによる複雑な活動が行われています。
まず麹から出る酵素が、蒸米のでんぷんをブドウ糖に変えます。
すると酵母がその糖を食べてアルコールを出します。
ワインでも焼酎でも、酒は必ず
酵母が糖分をアルコールに変える働きが行われますが
同じタンクの中で糖化とアルコール発酵が同時に行われるのは
日本酒だけです。
これを
並行複発酵と言います。

もろみの温度が高めだと酵母は活発に発酵してアルコールを造りますし、
増殖のスピードも上がります。
すると何が起こるか。
仲間が増えすぎてギュウギュウになった酵母が苦しんだり
自分が造ったアルコールで死んじゃったりで
お酒に良くないにおいがついたり、雑味が出たりするのです。

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(こちらは酒母)

最初は冷やして強い酵母を育て、
そこから少しずつ温度を上げていきじわじわと酵母を増やし
ちょうどいいところでまたゆっくり冷やしていく。
酒母の段階からもそうした温度調整に神経を使っているそうです。

そのやり方を「酵母にやさしく」と大滝さんは表現。
 
なるほどな~。。。
無理が出ないよう大切に育てられた健康な酵母の発酵。
近年の蔵王の素直というか、衒いのない酒質の理由は
こんなところにもあるのだろうかと思いました。

長くなりそうなので、その2に続きます。

蔵見学「蔵王酒造」その2

「蔵王酒造」さん蔵見学、その1からの続きです。

大滝さんにお話を聞いたあと、蔵を案内していただきました。

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 広い仕込み蔵。

タンクの容量が大きく、数も多いです。

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麹室には、大きな自動製麹器も。

蔵王酒造は一時、約3000石を醸す酒蔵だったので

その名残りで、いろんなものが大きい。

でも酒造りに関しては「大は小を兼ねないんです」と大滝さん。

少~中量の仕込みで造ったほうが
原料処理やもろみの管理がしやすいそうですが

大量を仕込んでいた設備を
そのまま
小~中量の酒造りに流用するのは難しいということです。

蔵王さんでは、来期の造りが終わったら、

設備を新しくすることも検討しているとか。

 

造りの方向性を変えたいと思った時に

それまでの設備が合わなくなるというのは

時々聞く話ですが、悩ましいですね…。

マスコミ効果などで、1つ、2つの日本酒銘柄に

人気が集中してしまうことはよくあります。

しかし、蔵元さん側ではこうした設備、原料調達の都合があるので、

突然需要が爆発的に変化したからといって

すぐに造る量を大幅に増やしたり減らしたりは難しいことです。

飲み手はそれを理解して、偏った情報のみに振り回されないようにしなければ。

自分が本当においしいと思える酒、好みに合う酒を探すことを楽しめる、

そんな賢い飲み手になりたいものです。

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これは何でしょう?

答えは、ヤブタの袋を洗って干しているところ。

 

萩野酒造さんでも話題になりましたが、

ヤブタ(酒を搾る大きなアコーディオン様の機械)の袋を

清潔に保つことにかんしては

本当に宮城の蔵の皆さんは気を遣っていらっしゃいます。

先生方の指導もあるのでしょうか。

近年宮城のお酒の香りのさわやかさが安定しているのは

こんなところのご苦労が反映されているのだろうと思いました。

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袋がついてないヤブタはこんな感じです。

 意外と珍しい画像?(笑)

 

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最後はきき酒をさせていただきました!

左から

 

「蔵王 純米大吟醸」山田錦 40

 

「純米大吟醸 蔵王昇竜」美山錦45

 

「蔵王 純米吟醸原酒」掛米・美山錦 麹米・山田錦 50

 

「特別純米 蔵王Inspiration」蔵の華 50

 

「特別純米 蔵王」美山錦 55 

 

蔵王酒造さんで現在使っているお米は、

美山錦、山田錦、蔵の華、ひとめぼれの4種類。

なかでは美山錦が多いそうで

 

「うちの酒には美山が合っているので主力にしていきたい」(大滝さん)

 

とのことです。

どれも、非常にていねいに大切に造られ、

管理されたことが伝わってくる味で、

ますます今後が楽しみになるお酒たちでした。(≧▽≦) 

 

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大滝さんと、帰り間際に駆け付けてくださった蔵人の金子さん(28)。

蔵王Inspirationは、このお2人と、営業の菅野さんという方
3人の若手社員が中心になって造られました。

金子さんも、今すごく酒造りをしている実感があって

やりがいを感じていると話してらっしゃいました。

そして締めに大滝さんのこのひと言

「万人受けするより、誰かにとっていちばん大事な蔵王になりたいんです」

なんかちょっとジーンと胸が熱くなりました。

蔵の長い歴史から見れば

2、3年の変化はまだまだこれから、なのかもしれません。

でも、10年20年経って振り返ってみたときに

「ああ、あのころが転換期だったね」と

いい意味で思えるといいですよね!

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蔵王酒造の皆さん、お世話になりました、
ありがとうございました!!

来期も期待してます!

今度はInspiration買って飲むどぉーーー!

蔵見学「蔵王酒造」その1

3月中旬、白石市の「蔵王酒造」さんの蔵見学へ!

200812月以来なので、5年以上ぶりです。

 

ここ2、3年、「蔵王」への周りの評価が上がってきていて、

私自身も、飲む機会があるたび「前の印象と違う!」

と思うことが増えていたお酒。

若い蔵人さんが、がんばっているという話も伝わってきていて

再訪したかった蔵のひとつだったので、楽しみに訪ねました。

 

白石駅から徒歩約10分で到着。                           

 今回案内をしてくださったのは

蔵人の大滝真也さん27)。

 

今期、蔵王さんは例年より早く造りを終えて

もろみもすでにすべて搾り終えていました。

でも、何より、大滝さんにゆっくりとお話を伺うことが目的でした。 

 

ことしで入社9年目の大滝さん、

入社して数年は、配送などの仕事をしていて

造りにはほとんど携わっていなかったそうです。

 

「酒造りは10名近くの南部杜氏がやっていて

社員は火入れから手伝うくらいでした」

 

ところが、5年ほど前から「社員の中から製造担当を育てたい」

という社長の意向を反映させ、大滝さんも造りに携わるように。

さらに2造り前から杜氏が代わったことを機に

大滝さんもより本格的に造りの作業に関わることとなりました。

なんと今期は大滝さんが杜氏の杉浦さんから製造計画を任されたそう。

 

 「今の杉浦杜氏と話すようになってから、

日本酒のことがすごく好きになったんです!」

 

と、顔を輝かせて話す大滝さん。

こちらまでうれしくなってくる生き生きとした表情です。

 

さて、今期発売され、仲間内でも大きな話題を呼んだ

蔵王さんのお酒がありました。

 

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ZAO Inspiration(蔵王 インスピレーション)」。

(写真がいまいちですみません。。。)

 

この日、同行いただいた早坂久美さんもブログで大絶賛。 

私はなかなか飲む機会に恵まれず、 

この日きき酒させていただいたのが初でした。 

なんと、スルスルとなめらかなお酒! 

なんの引っ掛かりも無く、するりん!と入っていきます。 

でも、たださっぱりしている酒とは違う。

 「水の良さ」を感じる、そんな酒なのです。

 

裏ラベルにはこんな記載があります。

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もう、これを読んだだけで、並々ならぬ決意と意気込みが

伝わってくるようではないですか!(*’’) 

 

これまでの蔵王の私の印象は

〝やや熟成感のある酒〟でした。

それとは真逆に近いこのお酒を、なぜ造ろうと思ったのか。

それが今回の見学でいちばん聞きたかったことでした。

 

その質問をすると、大滝さんはこんな話をしてくださいました。

 

「ことしは造る量を減らし、フレッシュなものを提供することを心掛けました。

 うちの水(蔵王の伏流水)の質は酒が柔らかい仕上がりになりやすいので、

 今まで火入れのタイミングが遅れると熟成感が出ていたんです。

 そこをスピードアップして、きちんとタイミングをはかって

火入れするようにしました」

 

その結果、酒質がかなりアップした、と大滝さん。

 

「〝蔵はこれから変わっていくんだ〟とアピールする商品が

 何かひとつ欲しかった。今まで味のある酒が多かったので、

 きれいなお酒を造りたかったんです」

 

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インスピレーションという言葉には、ひらめきや第六感という意味のほかに

 「何かしようという気持ちを起こさせる力」という意味があるそう。

 大滝さんたち自身、〝インスピレーション〟を得て作ったお酒。

 今度はそれを飲んだ方々が「何かしようとする気持ち」を起こせるように―。

 そんな思いを込めてこの名前を付けたそうです。